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受講希望者はご連絡下さい。




【高気圧作業安全衛生規則(以下、高圧則という)の改正と検証】

2015年8月2日に計算式表と各減圧時間を訂正しました。
2015年8月3日にM値の計算訂正を行いました。
2015年9月5日に潜水記録の保存を訂正しました。

今回の訂正箇所をご指摘&訂正にお力を貸して下さった方に
この場を持ちまして、お礼申し上げるとともに
今後もご意見&ご協力をよろしくお願いします。

※以下の内容は、個人的な限られた情報と、個人の知識&想像にて記載しています。したがって不適切な表現、誤った記載内容の可能性があります。また、今後の情報によっては記載内容の変更&訂正があることもご理解ねがいます。 


★はじめに
 昭和47年から40年以上、殆ど改正されてこなかった高圧則、主に空気だけを呼吸ガスと想定したガラパゴス的な規則の中、日本の潜水業界は世界の潜水常識&知識から見れば、部分的にありえない内容だったと思います。 

 たとえば水深90mまで呼吸ガスに空気だけを使用して潜る事が許されるなど・・・・理論より精神と根性と勢いが重要でした。使用を義務付けていた減圧表(別表2、別表3)も、世界で使用されている物と比べ非常に減圧症の罹患率が高いなど・・・・・・・作業潜水に従事する方達の3人に2人は隠れ減圧症との声も聞かれます。

 また、そんな事を理解しながらも規則を順守しなければならない事業所や公的関係者達の苦悩の歴史。そんな高圧測がようやく改正されましたが・・・・・・・・実際何がどうなるのでしょうか?
 

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【主な改正内容】

 
★改正:潜水計画
潜水計画は、別表2や3を使用して、潜水作業者本人が計画を管理することでしたが、改正後は事業者(会社)が管理をすることになりました。よって事業者は潜水作業計画書の作成と、計画内容を潜水作業者に周知する必要があります。


★改正:潜水記録の保存
潜水計画(高圧則:第十二条の二)に基づいて行われた潜水実地内容(5項目)を潜水作業者ごとに記録(下記は5項目+自主的に5項目)して、5年間保存することになりました。保存方法は紙でなくてもOKです。方法としては、減圧ソフトで作成した計画と、ダイバーに項目を満たすログ機能の着いたダイビングコンピューターを持ってもらい、浮上後に事業者がログをそのまま保存する方法が記入間違いや、ダイバーの手間なども無く良いと思います。

・作業日時
・作業場所
・作業内容
・潜水士の氏名
・呼吸ガスの種類
・潜水開始から浮上開始までの時間
・減圧停止水深と時間
・最大水深
・潜降速度
・浮上速度



★改正:呼吸ガス
改正前の、呼吸ガスは空気だけを想定していましたが、改正後は酸素、ヘリウム、窒素などのガスも呼吸ガスとして想定されました。


★改正:純酸素の使用
改正前、水中で純酸素を呼吸する事は禁止でしたが、改正後は可能になりました。


★改正:酸素分圧の制限
呼吸するガスの酸素分圧(PO2)は0.18~1.6ataと制限されました。ただし、減圧中にフルフェースやヘルメットなど、意識をなくしても直ぐに溺水しない状態や環境においては2.2ataまで使用できます。この制限は低酸素症(ハイポキシア)と高酸素症(ハイパーオキシア)に対する制限です。


★改正:窒素分圧の制限
呼吸できる窒素分圧(PN2)が最高で4.0ataに制限されました。よって呼吸ガスに空気を使用した場合、限界の環境圧力は4.0÷0.79≒5.0ataとなるので、海水では水深40mまでが限界となります。この制限は麻酔作用に対するものです。


★改正:二酸化炭素分圧の制限
呼吸するガスに含まれる二酸化炭素分圧(POC2)は0.005ata以下としなければなりません。これは高炭素症(ハイパーカプニア)を防ぐためです。実際PCO2が高くなると中枢神経系酸素中毒(CNS)や麻酔作用、深海ブラックアウトなどの罹患率が高くなるとの見解からです。


★改正:酸素ばく露量(酸素摂取量)
上記、酸素分圧の制限内であっても、肺酸素中毒を考慮して、1日の摂取量は600upt、1週間の摂取量は2500uptが上限となりました。求める式は下記となります。



ただ、純酸素を水深6mで呼吸した時の酸素分圧=PO2は1.6ataですので、30分呼吸しても摂取量は58uptにしかなりません。よって、殆どの潜水では問題ありませんが、飽和潜水など長時間に及ぶ高圧環境下で高酸素分圧に長時間暴露される場合は要注意となります。



★改正:潜水計画&減圧計画
次に潜水計画&減圧計画に関する改正は、従来の様な表で決めるのではなく、下記などの計算式を使用して計画することになりました。


 



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【改正の検証とポイント】

★改正後の計算式の検証-空気潜水

実際に計算式を使って、空気潜水計画をしてみました。


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・使用ガス:空気のみ
・作業水深:40msw(海水)
・潜水時間:水深40mまで4分で潜降+作業時間は60分
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①、はじめに、水面から作業水深に潜った間の、各組織に蓄積される窒素の分圧を求めます。各組織の窒素分圧を見ると、予想通り速い組織から遅い組織に向かって分圧が低い事が解ります。ちなみに潜降速度は10m/分です。


②、次に、水深40mで60分の作業を行った時の分圧を加えて、浮上開始時の各組織の分圧を求めます。同時に各組織で許されるM値=環境圧による可能限界組織分圧=可能限界浮上水深を求めます。減圧停止間隔を一般的な3mとした場合、この時点で水深12mまでの浮上なら各組織のM値を超えないことが解ります。


➂、よって、浮上速度10m/分にて水深40mから減圧停止水深12mまで浮上した時の分圧を計算します。各組織分圧を見ると、速い組織は窒素の排出が始まり、分圧値が下がっていますが、遅い組織はまだ若干増えているのが解ります。


④、次の減圧停止水深9mまで許される各M値を先に求めます。次に、各組織がその値より低くなるまでの水深12mにおける、減圧停止時間を求めます。結果は6分の減圧停止となりました。


⑤、水深12mの減圧停止完了から9mまで浮上した時の各組織の分圧を求めます。


あとは浮上まで、ここまでの計算を繰り返しを行います。
⑥、⑦、⑧、⑨、⑩


以上により、高圧則の計算式を用いた結果、水深40m、作業時間60分を空気だけで潜水すると、減圧停止は・・・

水深
12m  6分
 9m 12分
 6m 22分
 3m 42分

 以上となりましたが、上記の計画を他の減圧理論(アルゴリズム)数種類の計算と比べた結果、減圧時間は1番短い値=保守率の低い値いでした。しかし、今までのように、この計算式をそのまま使用する義務はありません。今回の改正でも、上記の計算式は最低限であり、それ以上に保守率が高くなる計画を推奨しています。

 言い換えれば、私達は様々なアルゴリズムによる計画&ダイビングコンピューターを使える事になったのです。これは大変ありがたく、貴重な事だと思います。

 よって高圧則のM値の計算式や値を変えても良いでしょうし、一般的に使用されている、減圧プランニングソフトを使用しても良くなりました。いずれにして私の計算が合っているなら、高圧則の計算式をそのまま使用した潜水は・・・・・お勧めできません。

 また、計算やソフトなどに不慣れな方は、従来よりも保守率が高く、従来と同じように水深と時間で引ける表(ダイブテーブル)がありますので、それを使用すれば良いと思います。

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追伸、2016年4月6日 掲載

計算式を用いて、今度はヘリウムと加速減圧を取り入れた潜水を計画してみました。

・潜降速度:10/min
・作業水深:50m
・作業時間:15min
・使用ガス:Tx20/30
・減圧ガス:EAN90


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以上となりました。
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★高酸素の使用は有意義です。
今まで呼吸ガスに空気だけを使用して来た潜水作業者に、水中で高濃度酸素を呼吸させる事に不安を抱いている方や事業者の声を聴きます。でも、現在では一般のダイバーなども小脇に酸素を携帯し、安全停止中に呼吸することで、減圧症への保守率を高めています。潜水時間の長い作業者にとっては、なおさら有意義な改正であると信じます。大切なのは危険と決めつける事ではなく、使用者に正しい教育を行ってあげることだと思います。今回の改正により、業界の中で隠れ減圧症や減圧症で苦しんでいる方達が、これ以上増えない事を願っています。



★肺酸素中毒よりも中枢神経系酸素中毒(CNS)に注意しましょう。
肺の酸素中毒よりも、CNSによる水中での痙攣発作が危険です。改正規則にはCNSに対する時間制限はありませんが、酸素分圧が1.6ataなら45分、1.5ataなら120分、1.4ataなら180分を呼吸限界として下さい。さらに限界値なので、安全を考えて計画や実践では余裕もって各限界時間の80%以内の呼吸時間になる様にしましょう。

 時間制限を超える場合は、25分ごとに空気で5分間呼吸する方法もありますが、ダイビングベルや減圧室の様なドライ環境でないと、危険かもしれません。



★作業中の酸素分圧は1.4ata以内にしましょう。
少なくとも、潜水作業者が作業を行う水深では、酸素分圧が1.4ata以内になるようにしましょう。作業労働により体内の二酸化炭素が高くなり、酸素中毒:CNSの発症率が高くなるからです。よって酸素分圧1.6ataで呼吸するのは減圧停止中など、労働を伴わない時にしましょう。


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あとがき

 以上、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。43年振りの抜本的な高圧則の改正に伴い、業界関係者の中には戸惑いや不満も多々あると思います。しかし、今回の改正が海に囲まれた日本の潜水業界にとって、世界に貢献できる潜水技術と知識に繋がる事を願うと共に、この記載が潜水関係者各位に少しでも安全に役立ってもらえれば幸いです。

 それでは